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少し飲み過ぎたかなと、晁光は苦笑いすると未だ瞼を閉じ夜風に身を委ねている柳に、そっと声をかけた。
「……良かったの?」
「えっ?」
自分の声に反応し、目を開け顔を向けてきた柳と視線が重なると、二次会に繰り出していった学生達の姿を思い出し言葉を続ける。
「二次会。結構、皆盛り上がってたから」
晁光の言葉に、柳は彼が新入生である自分まで抜け出してしまったことを気にしているのだと気付き苦笑いした。
本当は、先に帰ると言い出した彼に便乗したのだ。
あの場を上手く切り抜ける為に。
柳は目を伏せるとばつが悪そうに口を開く。
「いいんです。オレ……実はあーゆー集まり苦手で」
「”あーゆー”?」
優しい眼差しを向け聞き返してきた晁光を横目で見詰めると、はにかんだ。
「その、知らない人同士で飲み食いするみたいな?」
気まずそうにそう語る柳に、晁光は驚いた顔をすると口を開く。
「へぇ……意外と人見知りなんだ」
「そうは見えないですか?」
上目遣いで聞き返してきた柳と視線が重なると、晁光はふっと笑みを浮かべた。
「……いや、そうかもね」
「えっ……」
不思議そうに首を傾げた柳から視線を逸らすと、晁光は目を伏せる。
「時々さ……なんか、君が遠くにいるように感じるから」
「…………」
黙って耳を傾けている柳に、晁光は彼を見る度に感じる自分の胸の内を話して聞かせた。
「なんて言ったらいいんだろう……この時代じゃない……何処か……遠くに……」
分かりづらい例えだったかもしれない。
だが自分でも上手く表現できないのだ。
柳の姿を見る度に感じる胸のざわめきと、彼が視線を送る先に見える何処か異国のような風景を懐かしいと思う自分の感覚に戸惑っていた。
なんだろう、この感情はーーーー。
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