第三世 数年の時を得て、現世で二人は巡り逢う

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 物思いにふけっている晁光に、柳は戸惑いながら声をかける。 「……先輩って……哲学とか好きな人ですか?」  柳の言葉に現実に引き戻されると、晁光は慌てて彼に顔を向けた。 「あ……ごめんっ。変なこと言った」  ばつが悪そうな顔をする晁光を、柳はクスリと笑う。 「いえ。面白いですよ。先輩と話すの」 「面白い? 俺の話しが?」 意外といった顔をした晁光に、柳は微笑みながら言葉を続ける。 「はい。なんか……納得できるっていうか……『そっかー』みたいな?」  無邪気な笑顔でそう語る柳に、晁光は驚きを隠しきれなかった。 今まで人からそんな風に言われたのは初めてだ。 付き合っていた彼女にさえ『つまらない』からと言う理由で別れを切り出されたことがある。 そんな自分の話しに耳を傾けてくれる柳の感覚を、正直少し疑った。
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