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「……初めて言われた。俺の話しが面白いなんて」
未だ信じられないと言った様子でぽつりと呟いた晁光を、柳は愉快そうに見詰める。
「皆、先輩のこと見る目ないんじゃないんっすか?」
「…………」
何気ない柳の一言に、じわじわと胸の辺りが熱くなるのを感じ、晁光は言葉を失うと立ち止まり空を仰いでいる柳の横顔を見詰めた。
「あっ……」
「えっ……」
ふいに彼が声を漏らし視線を向けた先に、晁光は釣られるようにその先にあるものへと目を向ける。
そこには、真っ赤な花を咲かせる一本の木が公園の隅に佇んでいた。
「……セイヨウサンザシ」
「えっ?」
思わず口から漏れた言葉に、柳が反応して聞き返す。
そんな柳を一瞥し微笑むと、晁光はセイヨウサンザシを見詰めながら言葉を続けた。
「あの花の名前。大学にも一本だけ木があるんだ」
「へぇ……先輩って詳しいんですね」
柳が感心したような声を漏らし、晁光は苦笑いすると目を伏せる。
「……そんなんじゃないよ」
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