第四世 前世を捨てた君

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 急に声を上げられ、晁光は驚いて身体を震わせると本棚から出しかけた本を床の上に落とす。 それを拾いながら、おずおずと振り返ると衛が不満そうな顔をして自分を見詰めていた。 「いや、なんでって言われても……」  顔を引きつらせている晁光に、衛は鼻息を荒くさせながら近付いて行くと、晁光の腕を掴む。 「この間知り合った新入生の娘達に誘われてさっ、せっかくのチャンスなんだからお前も来いっ!」 「チャンスって言われても……俺、忙しいから」 戸惑いながら手にしていた本を掲げて見せる晁光に、衛は深い溜息を吐いた。 「忙しいってたかがサークルだろぉ? なに調べてんだよ?」  呆れた様子で問いかけてきた衛に、晁光は掴まれていた腕をやんわり解くと、本のページをめくりながら答える。 「夢」 「夢?」 「そう。最近さ、良く同じ夢見るんだ。だから、なんか意味があるのかなって」 そう言いながら真剣な眼差しで本に目を通し始めた晁光に、衛は首を傾げる。 「ふーん……つーか、それミステリーと関係なくね?」
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