第四世 前世を捨てた君

9/21
前へ
/140ページ
次へ
「あの……」  戸惑いながら腰を浮かせかけた柳に、晁光は苦笑いすると改めて自分も椅子に座り直す。 「騒がしくてごめん。座って」 「はい」 やっと話しを聞ける状態になったことにほっと胸を撫で下ろすと、物珍し気に辺りを見渡している柳に身を乗り出した。 「それで、浅葉君はミステリーが好きなの?」  瞳を輝かせながら問いかけてきた晁光に、柳は気まずそうに苦笑いする。 「好きって言うか……そのぉ……」 「なに?」 満面の笑みで話しを促す晁光を一瞥すると、柳は目を伏せた。 こんな話し、他人にしたところで相手にされないのがオチだろう。 だから友達にも言えず、暫く考えないようにしていたのだが、やはり気になって仕方なかった。 偶然、人伝えで聞いたこのサークルに、自分の話しに興味を持ってくれる人が一人でもいるのではと思いきって来てみたが、まさか晁光が所属していたとは……。 なるべく、知り合いには聞かれたくなかった。 きっと変なヤツだと思われるだろうから。 でも此処まで来た以上、話さない訳にはいかなかった。 それに、誰かに聞いてもらいたいと思っている自分がいる。
/140ページ

最初のコメントを投稿しよう!

67人が本棚に入れています
本棚に追加