第四世 前世を捨てた君

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 柳は小さく深呼吸をすると、意を決し戸惑いながら口を開き始める。 「……いや……こんなこと言ったら変なヤツって思われるかもなんですけどぉ……」 「そういうの大歓迎。宇宙人に遭遇したとか、心霊体験したとか、そういった不思議な体験したことあるなら是非聞かせて」 自分にはハードルが高い内容に、柳は一瞬唖然とするも言いづらそうに言葉を続けた。 「宇宙人とか幽霊に会ったことはないんですけどぉ……その……不思議な体験はしてるかなって……」  首を傾げながら目で訴えてきた柳に、晁光は目を丸くすると問いかける。 「してるって……今も? どんなこと?」  真剣な眼差しを向けてきた晁光におずおずと視線を向けると、柳は静かに口を開いた。 「……セイヨウサンザシ」 「えっ……」  思わぬ柳の言葉に、時間が止まる。  硬直している晁光には気付かず、柳は言葉を続けた。 「この前、先輩に教えてもらって知ったんですけど……最近、よくあの花の夢を見るんです」 「…………」  柳の言葉が脳裏を駆け巡り、それと同時にいつも夢で見る真っ赤な花が舞い上がる光景が広がる。 そして、その奥に佇む黒髪の女性。 哀し気な横顔が柳の顔と重なった。
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