第四世 前世を捨てた君

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名前を呟きながら夢の光景を脳裏に思い描く。 小高い丘の上、赤い花びらが舞う空、そして自分に向かって笑顔で手を差し伸べてくる男の姿……。 『柳月……』 「……っ……?!」  夢で見る男性にそう呼ばれたことを思い出した途端、頭に激痛が走り、柳は頭を抱えるとテーブルの上に突っ伏した。 その様子に、晁光は慌てて腰を浮かせると心配そうに柳の顔を覗き込む。 「どうしたっ?」 「いやっ……なんか今、頭がズキってして……」 「大丈夫? 具合悪いんなら、今日はここまでにしようか?」 「すいません。なんだろう急に」  素直に自分の言葉に従う柳に、ほっと胸を撫で下ろすと、晁光は席を立った。 「送って行こうか? 俺ももう帰るから」  晁光の申し出に柳は照れ臭そうに微笑むと、ゆっくりと席を立った。 「じゃあ、甘えちゃおうかな」
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