第四世 前世を捨てた君

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「また、今度ゆっくり話すよ」 「はいっ。楽しみにしてます」 「……………」 その場を逃れるため口にした言葉を素直に受け取る柳に申し訳ないと思いながら、晁光は口を噤むとゆっくりと足を間に踏み出した。  晁光が歩き始めたのを確認すると、柳も正面を向き歩き始める。 「?」 だた、ふと何かに呼ばれたような気がし足が止まった。 「どうしたの?」 晁光の問いかけに、柳は自分を呼ぶ声が聞こえた方へ視線を向けるとゆっくりと唇を動かす。 「……先輩」 「ん?」 「この先って……何かありますか?」 「えっ……」  真っすぐと何処かを見詰めている柳の姿に、晁光は小さく声を漏らすとその視線の先に目を向けた。 その先は紛れもなく自分が良く足を運ぶ場所へと繋がる道だ。 草木に覆われ道と呼ぶ程のものではないが、ここを通り抜ければあの場所に辿り着ける。 なぜ柳がそれを知っているのか、不思議に思い晁光は柳へと視線を向ける。  柳は相変わらずその先の視線を向けたままゆっくりと足を前に踏み出した。 その様子に思わず晁光は声をかける。 「浅葉君?」 「ちょっとすいません……」 「…………」 そう言ってそのまま足を止めることなく前へと進んで行く柳を、晁光は困惑した表情で見詰めていたが、我に返ると慌てて後を追って行った。
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