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風が止み、柳は花から手を離すと小さく息を吐く。
乱れた髪を整え、ふと晁光の方に顔を向けた瞬間、違和感を感じ眉を潜めた。
「……先輩?」
「…………」
柳の呼びかけに、晁光は伏せていた瞳をゆっくりと上げる。
今までとは違う、何か意志を持って熱い眼差しを向けてくる晁光に、柳は戸惑いながら近付いて行った。
「どうして……泣いてるんですか?」
じっと自分を見詰めたまま、静かに涙を流す晁光に、柳は困惑した表情を浮かべる。
「先輩?」
頬を伝う涙に、思わず柳が手を伸ばすと、力強い手で手首を握られた。
「!」
驚いて身体を硬直させている柳と視線が重なった途端、晁光の中で何年も眠っていた想いが溢れ出す。
「ゆづっ……きっ……?」
「えっ……」
戸惑う柳に、晁光は縋るように言葉を続けた。
「俺を……覚えてないのか? 柳月」
突然、自分を”柳月”と呼び始めた晁光に、柳は意味が分からず顔を強ばらせると一歩後ずさる。
「……なにを……言ってるんですか? 先輩……」
柳が次第に遠ざかって行く様に、思わず掴んでいた腕を引き寄せた。
「柳月……!!」
「?!」
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