第五世 蘇る記憶

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 再びドアノブに手をかけると、強く握り締める。 脳裏に浮かんだ夢の中の男性の姿に慌てて首を左右に振り否定すると、意を決しドアノブを回した。  ドアの隙間から恐る恐る覗き込んだ先に、その人はいた。 テーブルに寄りかかり手元の本に視線を落とす彼の姿は、窓から差し込む夕日に赤く染められている。 真剣な眼差しで本を読みふけっている横顔は、夢で見た通り美しかった。  ふと人の気配に気付き、晁光は顔を上げると視線をドアの方へと向ける。 そこには、ずっと待ち焦がれていた愛しい人の姿があった。 晁光の顔から自然と笑みが零れ落ちる。 「いらっしゃい」  柔らかい笑みを浮かべ声をかけてきた晁光に、柳は弾かれたように目を見開くと、昨日までとは違う晁光の雰囲気に困惑した表情を浮かべた。 「せん……ぱい?」
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