第五世 蘇る記憶

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 問いかけるように口を開いた柳に、晁光は照れ臭そうに目を伏せると、見よう見まねでセットした髪を手で撫でた。 「うん……なんか、変かな?」 「いやっ……そのっ……いつもと全然違うから」 「そう?」 「はい……そのぉ……似合ってますよ。そっちの方が」 柳の言葉に、晁光は嬉しそうに微笑むと、ほっと胸を撫で下ろす。 「良かった」 「…………」 そう言って目を細めた晁光の笑顔に、柳は思わず魅入った。 前にも、この笑顔を見た事があるような気がした。 何十年も……いや、何百年も前から、この笑顔を知っている。 自分だけに向けられる、優しい瞳をーーーー。 「座って」 晁光の言葉に、柳は我に返ると、慌てて勧められた椅子へと腰を下ろす。 「あっ、はい」 「コーヒーでいいかな?」 「はい……」 気のせいか、昨日よりも明るい表情を浮かべ、自分の為にコーヒーを淹れる準備をする晁光を、柳は複雑な心境で見詰めていた。
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