第五世 蘇る記憶

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 テーブルの上に置かれた二つのマグカップから、淹れたばかりのコーヒーの香りが立ちこめる。 それを一つ、目の前の柳に差し出すと、晁光は手元に残ったカップに口を付けた。 「ありがとうございます……」 ぽつりと呟き、おずおずとカップに両手を伸ばす柳を上目遣いで見詰めると、晁光は思いきって本題を口にする。 「昨日も、例の夢って見た?」  前置きもなく問いかけてきた晁光に、柳は身体を一瞬大きく震わせると、口元に持っていきかけていたカップをテーブルの上に置く。 「えっ? あぁ……えっと……」 「ん?」 好奇心の目を向けてきた晁光から視線を逸らすと、柳は気まずそうに俯いた。 「……はい」  柳の返事を聞いた途端、晁光は身を乗り出すと言葉を巻くしてる。 「そうなんだっ? それで、何か変わったこととかなかったっ?」 「変わったこと?」 「そうっ。そのっ……何か夢に変化はない?」 「…………」 口を噤んでしまった柳に、晁光は困った眉を八の字に曲げると心配そうに顔を覗き込む。 「どうしたの?」
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