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再び期待で胸を膨らませると、晁光は慎重に言葉を口にする。
「……俺も、同じ夢を見るんだ。その……赤い花の夢を」
「えっ……」
「君と同じ……丘の上に咲く、セイヨウサンザシの夢」
「…………」
そう言った晁光の瞳と重なった途端、何かに囚われたかのように柳の身体は動かなくなった。
ふいに目の前にチラチラと舞い始めた赤い花びらの存在に、柳は眉を潜めると一枚の花びらを目で追う。
舞いを踊るように回りながら宙を彷徨っていた花びらは、勢いをなくし落下して行く。
その様に、柳は無意識のうちに手を差し出した。
広げた掌の中央に向かって真っすぐと落ちて行く花びらに、愛おしさを感じた。
花びらが着地したと同時に、上から大きな手が重ねられる。
その途端、懐かしい温もりに柳は顔をほころばせると、重ねられた手を握り返した。
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