第五世 蘇る記憶

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「あっ……」  大きな音を立てて床の上に椅子が転がる様よりも、晁光は払われた手に驚いた顔をすると、縋るように柳へと視線を向ける。 何かに怯えたように唇を震わせながら自分を凝視している柳の姿に、晁光は眉を潜めると、ゆっくりと腰を上げた。 二人の間に憚るテーブルを横切り、震える柳に手を伸ばす。  自分に向かって真っすぐ伸びて来る晁光の手に、柳は顔を歪めると喉から声を絞り出した。 「……っ……触る、なっ」 叫ぶような柳の声に、晁光は一瞬身体を大きく震わせると動きを止める。 「……柳月?」 戸惑ったように名前を呟いた晁光に、柳はカッと身体が熱くなる感覚に目を見開いた。 「その呼び方もっ……! やめてくれ……!!」 「……っ……!」  まるで悲痛の叫びのような柳の訴えに、晁光は困惑した表情を浮かべるとその場に立ち尽くす。
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