第五世 蘇る記憶

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 思わず叫んでしまった自分の声に、柳は我に返ると慌てて晁光へと頭を下げた。 「あっ……すいませんっ。オレ……何を言って……」  混乱したまま侘び続ける柳の姿に、胸が締め付けられる。 だが、今は柳を落ち着かせることが先決だと、晁光は深く深呼吸すると、精一杯、微笑んで見せた。 「いやっ……俺が悪いんだ……俺が……」 「先輩……?」 戸惑ったように視線を向けてきた柳の顔を見た瞬間、必死で冷静を保とうとしていた自分が壊れてしまうような気がした。 晁光は慌てて顔を逸らすと、顔を隠すように額に手を当てる。 「すまない……今日は、帰ってくれないか」  背を向けたまま震わせた声で訴える晁光の姿に、柳はゆっくりと後ずさると慌てて部屋を飛び出して行く。 「あっ、はい。すいませんっ」    一人残された晁光は、悲痛に歪んだ顔を両手で覆うとその場に踞った。 「……柳月っ」
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