第五世 蘇る記憶

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 校内にある食堂の窓際のテーブル席で、柳は一人、頬杖をつきながら外を眺めていた。 今朝から何度も襲ってくる眠気に耐えながら、覚束無い手つきで目の前のランチに箸をつける。 だが、今は食欲よりも眠気の方が勝っていた。 箸の先端をくわえたままカクッと首を落とした途端、慌てて顔を上げると目を擦る。 そんなことを何度も繰り返しているせいで、一向に食事は進んでいなかった。 「浅葉くーん」 ふいに耳に響いた甲高い声に、柳は迷惑そうに眉を潜めると声がした方へ顔を向ける。 「あぁ?」  顔に似つかずガラの悪い返事を返してきた柳に臆する事もなく、水川レナ-みずかわれな-(18)は屈託の無い笑顔で柳の顔を覗き込む。 「どうしたの? なんか眠そうな顔して」  突然、目の前に現れた自分を見詰めるつぶらな瞳に、柳はほんのり頬を染めるとさり気なく視線を逸らす。 「あー……寝てないから」 「なんで? ゲームで夜更かしでもした?」 「そんなんじゃ……」 相変わらず顔を覗き込んでくるレナに、柳はばつが悪そうな顔をすると顔ごと外へと向けた。
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