第一世 一番古い記憶

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 あちこちで鮮血に染まり倒れている屍の中央で、晁光は荒い呼吸をしながら、血で染まった刃を地面に刺し身体を支えていた。 返り血を浴びた頬を手の甲で拭うも、負傷した左腕から流れ出す血が再び頬を赤く染めた。 まだ自分の命を狙う者が何人も残っている。 もしかしたら、このまま柳月に出逢うことがないまま、この世を終わることになるかもしれない。 今度はいつ逢えるのだろかと、不確かな出逢いを思い描いていると、森の奥から先ほど逃がした筈の柳月が姿を現す。 「柳月っ?!」  驚いた顔をして自分の名を叫ぶ晁光に、柳月は腰まで伸びた黒髪をなびかせながら駆け寄って行く。 「晁光!!」 片膝を地面につき着物を鮮血に染める晁光の傍に跪くと、柳月は血で汚れた晁光の頬を着物の裾で拭う。 「怪我をしたのっ? 大丈夫っ?」 「なんで戻って来た?!」 悲痛の声を上げる晁光に、柳月は森を指差すと言葉を詰まらせる。 「追っ手がっ……森の奥までっ……!!」 「なにっ?」  柳月が指差した先には、既に別の追っ手が仲間を引き連れて自分たちの元へと駆け寄って来ていた。  晁光は腕に力を入れると負傷した身体を起こし、大地についた両足に力を込める。 そんな晁光の背中に腕を回すと、柳月は必死で支えた。
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