第五世 蘇る記憶

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 深い溜息を吐いた途端、誰かに背中を叩かれ、柳は驚いて肩越しに振り返る。 「おうっ、浅葉君」 「あっ、先輩」 柳が振り返った先には、先日出会った衛が、屈託のない笑顔で立っていた。 「今日さ、サークル顔出す?」 顔を合わせた途端、問いかけてきた衛に、柳は瞳を泳がせる。 「えっ……あ……その……」 正直、迷っていた。 出来れば、今日はこのまま晁光の顔を見ないで帰ってしまいたい。 だが、サークルに入って早々サボるなど、してもいいものかと。 一人思い悩む柳を余所に、衛はバックから晁光に借りていたノートを取り出すと柳に差し出す。 「じゃあさ、コレ、晁光に渡しといてくんない?」 「えっ? 先輩は来ないんですかっ?」 「俺? 俺はサークルがあるから」 「はっ?」 怪訝な表情を浮かべ首を傾げる柳に、衛はニッと笑みを浮かべると大袈裟に困った顔をして見せた。 「合コンサークル! 俺いないとさ、活動できないんだわっ」 「はぁ……」 「じゃあ、よろしくー!」 「…………」  返事も聞かず、さっさとその場を去って行く衛の姿を、柳は唖然として見詰めていたが、ふと強引に渡された晁光の名が記されたノートに視線を落とすと眉を潜めた。
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