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あの人は、静かに眠っていた。
たった一人、セイヨウサンザシの木に背を凭れかけ、手には夢に関して記された分厚い本を持って。
「……せん、ぱい?」
声をかけてみたが、彼が夢から覚める気配はなかった。
気付かれないようにそっと腰を屈め、晁光の寝顔を観察する。
眼鏡をかけているせいだろうか。
何処か夢で見た彼とは違うように思える。
確かめたくて、柳は震える手を晁光へと伸ばした。
少しズレた眼鏡のツルを摘み、晁光の顔から外して見る。
「っ……!」
その途端、柳は息を呑むと、その寝顔に魅入った。
間違いなかった。
やはり彼が夢の中の男性だと。
それだけではない。
顔を見た途端、言いようの無い感情に支配される自分がいることに気付いた。
息が出来ないほど鼓動が高鳴り、頬は熱く高揚していく。
なぜ、こんな気持ちになるのだろう。
高鳴る鼓動は、まるでこの気持ちを昔から知っていたかのように気持ちを更に昂らせる。
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