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柳はそっとその場に膝をつくと、もっとよく彼の寝顔が見たいと顔を寄せた。
眼鏡をかけていたときには気付かなかった、少し長めの睫毛は薄らと湿っている。
哀しい夢でも見ているのだろうか。
濡れる睫毛は、木々の間から差し込む夕日に照らされて、とても綺麗だった。
思わず手を伸ばすと、まだ濡れている頬を指先で辿ると、少しだけ開かれた薄い唇に辿り着いた。
浅い呼吸を繰り返す唇は、まるで自分を誘うかのように赤く色づいている。
それは、今彼の上に咲くセイヨウサンザシの花びらのような美しさで、自分を魅了する。
自然と、口から吐息が漏れた。
こんなこと間違っていると、頭では理解していても衝動を止めることができなかった。
自分の存在など知らず、眠り続ける晁光に、柳はそっと唇を寄せていく。
二人の陰が重なった瞬間、何処からともなく現れた風に、二人の身体は包まれた。
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