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『晁光……』
遠い遠い彼方から、名を呼ばれた気がした。
愛おしむような声で呼ばれ、懐かしさに胸が高鳴った。
ゆっくりと瞼を持ち上げると、ぼやける視界の中に愛しい人の姿を見つけ、思わず晁光は頬を緩ませる。
「……ゆづ、き」
漆黒の長い髪をなびかせ、嬉し気に自分の顔を覗き込んでいる柳月の姿に、晁光は目を細めると手を伸ばす。
指先が触れた柔らかい頬は、まるで現実に触れているかのように温かい。
恥ずかし気に長い睫毛を伏せ、徐々に赤く染まっていく頬に掌を当てると、その上から彼女が手を重ねる。
今までの夢とは違う、まるで現実と錯覚してしまうほど確かな熱を感じ、晁光は歓喜で目を見開くと、ゆっくりと上半身を起こした。
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