第五世 蘇る記憶

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「おはようございます。先輩」 そう呼ばれた瞬間、晁光は一気に覚醒すると慌てて上半身を起こした。 「あっ……?」 「こんな所で寝てたら風邪引きますよ」 笑顔で声をかけてくる人物を見上げ、それが柳であることに気付くと晁光は肩を落とし後ろの木へと背中を凭れかけた。 「あぁ……いつの間にか寝てたんだ」 独り言のように呟き、思わず皮肉の笑みを浮かべた。 彼は現実の”柳月”だ。 さっきまで夢で見ていた彼女と同一人物である彼の存在に、落ち込む必要はないはずなのに、あまりにも夢の中の彼女との時間が幸せ過ぎて、一層覚めなければいいと思った。 あんなに鮮明な夢、今まで一度も見たことはない。 夢の中の出来事だったとしても、確かに彼女の熱を感じたと。 そう……この唇にーーーー。
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