第2章 セシル・ティア~儚くも永久の物語り~

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暗い森の遊歩道をセシルとクラウスは灯りを灯さずに、木々のすき間から照らされる月明かりをたよりに歩いていた。 「今夜は満月ですね。こんなに明るくて...、散歩が気持ちいいです。」 セシルは隣で歩くクラウスの横顔を見つめた。 白い月明かりが、クラウスの整った横顔を照らす。 漆黒の艶のある髪。月明かりが、少し長い前髪を透かし、形のいい目をのぞかせた。 セシルはそっとクラウスの指に自分の指を絡ませた。 その目がチラッとこっちを見る。 「嫌...、ですか?」 うつむき、靴先を見る。 クラウスは何も言わず絡めたセシルの指を軽く数回撫でた。 それだけで、セシルは熱い息が漏れる。
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