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「……何だか、随分豪勢だな」
「そ、そう?」
部屋に入った途端、長瀬が食卓を見て呟いた一言に、私は引き攣った笑みを浮かべた。
それもそのはず、ずらりと並べた料理はいつも以上に品数が多く、バラエティに富んでいる。
何を作っていいのかわからない……と悩んだ末に、わからないならとにかく作ってしまえ、という結論に至ったせいだ。
ブロッコリーと舞茸のごまたっぷりナムル。
白菜と豚肉の重ね蒸し。
小ぶりのエビマヨ。
ほうれん草とじゃこおろし。
じゃがいもだけのシンプルなグラタン。
見よう見まねのとんぺい焼き。
これまで作った中で、長瀬がおいしいと言ってくれたもの。
それから、飲みに行く先で、長瀬が気に入っていたものを思い出しながら選んだメニュー。
テーブルに乗り切らないほどの料理は、全部、長瀬のために作ったものだ。
誰かのために作る料理がこんなにも難しく、少しだけくすぐったい気持ちにさせるものだと、ここまで深く実感したのは初めてだった。
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