-1-

5/17
前へ
/34ページ
次へ
わたしの背中を、 ぞくりと寒気が走った。 ヒロシの言っていた、 狐火の話が脳裏をかすめる。 …まさか、ホントに…? 「…幽霊の仕業、って事も ないだろうけどね」 もう一人の人物が、 冗談とも取れないような 深刻な口調で呟いた。 …春山先生の、お父さんなのかな。 その割には、すごく 他人行儀なような…。 さっきまで感じていた 後ろめたさはどこへやら、 好奇心に勝てず、 声の主を見ようとさらに 壁の向こう側を覗き込んだ時だった。 「こら、椎名。なにしてんの」 いたずらを咎められた猫のように、 わたしはぴょこっと飛び上がった。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

437人が本棚に入れています
本棚に追加