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靴音は、コンクリートに
音を響かせながら、
次第に大きくなって来た。
「…おとうさん」
春山先生の声に驚いて、
わたしはもう一度顔を出した。
…お父さん?
「わざわざお疲れ様です。
お仕事の方は、大丈夫なんですか」
壁の陰から見える先生は、
少しだけ緊張したような
面持ちでそう言った。
「うん。二時間ほど、
抜けさせてもらった」
穏やかな、低いけれど
よく響く声。
「所轄の人間に少し
話を聞いて来たんだけれど、
なんだか妙な事件だね」
「そうなんです。
警察の担当の方が証拠品として
ビデオを全部回収して
行かれたんですけど…どうやら、
どの防犯カメラにも、
映っていないらしいんですよ、
犯人が」
…えっ…。
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