-1-

4/17
前へ
/34ページ
次へ
靴音は、コンクリートに 音を響かせながら、 次第に大きくなって来た。 「…おとうさん」 春山先生の声に驚いて、 わたしはもう一度顔を出した。 …お父さん? 「わざわざお疲れ様です。 お仕事の方は、大丈夫なんですか」 壁の陰から見える先生は、 少しだけ緊張したような 面持ちでそう言った。 「うん。二時間ほど、 抜けさせてもらった」 穏やかな、低いけれど よく響く声。 「所轄の人間に少し 話を聞いて来たんだけれど、 なんだか妙な事件だね」 「そうなんです。 警察の担当の方が証拠品として ビデオを全部回収して 行かれたんですけど…どうやら、 どの防犯カメラにも、 映っていないらしいんですよ、 犯人が」 …えっ…。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

437人が本棚に入れています
本棚に追加