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先に馬木くんがキッチンからいなくなると、私もボウルと小皿を持って部屋に入ろうとした。
「ひゃ――」
自分の口から素っ頓狂な声が出る。
開けたままにしておいた扉が勝手に閉まりそうになって、手に持っている物を落としそうになった。
「何してんの」
一旦全部置いて扉を開けようと思ったら、馬木くんが扉を開けてくれる。
「ありがとう、ございます」
「冷めない内に食べよ」
テーブルの真ん中にサラダを置いて正座すると、ふと、手を合わせた馬木くんと目が合った。
「ほら」
「あ」
いそいそ私も手を合わせると、いただきます、と2人の声が重なる。
カレーの山をスプーンで崩す馬木くん。
私はスプーンを持ったまま、目の前のカレーを見つめる。
暫くそうしていると、食べないの?と聞かれてしまう。
馬木くんの反応が気になって、それどころじゃない……。
「た、食べる」
「うん」
モクモク口を動かす馬木くんから、味の感想は出てこなかった。
けれど、ぺろっとすぐに完食して、空になったお皿を片手におかわりしにいくところを見ると、美味しいって言われるのと同じくらい嬉しいと思った。
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