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「足崩せば?」
「あ――うん……」
ずっと正座していた足を、ぺたんと床につけて崩す。
「今日のお腹は、何気分だったんですか?」
「朝からカレーだったよ」
「そうですか」
満足、とお腹を押さえる馬木くんがじっと見つめてきて、へらっと緩んでいた表情が途端に引き締まる。
「そうやってカレー食べてたら、学食で激辛食べてた時のアンタ思い出す」
「あれは……辛いっていうより、唇が麻痺して痛かったよ」
「そう? まぁ、毎日食ってたら胃が壊れそうだけど」
「フフ、私は1回食べただけで胃がキリキリしました」
「それ、胃が弱いんだって。豆食べな、豆」
「豆?」
「うん。誰だったっけ。前になんかの講義で――」
私が何か言えば、馬木くんから返事が返ってきて、その言葉にまた私が返事をして。
この時間がずっと続けばいいのに。
初めて、そんな風に思った。
「食器、少しの間、水に浸けておきますね」
綺麗に食べ終わったお皿を、2回に分けてキッチンまで運ぶ。
食器に水を張りながら、ふと考えた。
学食でも同じテーブルで食べているのに、どこか雰囲気が違うのはなんでだろう。
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