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周りに人がいないからかな、と気付くと、途端に“2人きり”を意識する。
顔が赤くなる前に軽く頬をつねりながら部屋に戻ると、入ってすぐ異変に気付いた。
「う、馬木くん」
部屋の照明が消えていて、テレビの明かりだけがぼんやり辺りを照らしている。
「んー?」
そろそろと床に膝をつけてベッドの傍まで這う私は、テレビの前で屈んでいる馬木くんに問い掛ける。
ひょっとしてこれから、
「ホラー、見るの?」
「うん」
春になって日が長くなったとはいえ、カーテンの隙間から見える外はもう暗くて、テレビが付いていなければ部屋は真っ暗。
「復刻版でそんなに怖くないやつ借りてきたから、大丈夫だろ」
「ほんとですか?」
ベッドの淵にもたれて座る馬木くんの横顔に苦笑いで聞くと、私も膝を抱えて四角い画面を見つめる。
小学生の頃、よく恵子ちゃんの家に泊まりに行くことがあった。
その頃はまだビデオテープの時代で、おじさんがお店で借りてきたそれを恵子ちゃんと布団に入って観るのが好きだった。
今思えば、話の内容は全然理解していなかったと思うけど、恵子ちゃんと“巻き戻しして、あの場面で止めるんだよ”とリモコンで遊んだり、お喋りしながら観るのが楽しかった。
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