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その時も、いつもみたいにおじさんの部屋からビデオテープを持ってきた恵子ちゃんと、ワクワクしながらテレビ画面を見つめていた。
今まで観てきたものと比べて導入部からやけに画面が暗いなぁと思ったけれど、恵子ちゃんとお喋りし始めると気にならなくなった。
少しウトウトし始めた時、隣からふと小さな悲鳴が聞こえた。
閉じかけていた瞼を上げて恵子ちゃんを見ると、頭から布団を被ってた。
どうしたんだろうと思いながらなんとなくテレビを見上げたら、画面いっぱいに白目を剥いた髪の長い人が映っていて、息を呑む私は自分も白目を剥くかと思った。
あれから、ホラー映画は観ないようにしてたんだけど……。
もう大人だし、案外もう、どうってことないかもしれない――。
「あぁぁ……あぁ」
「ねぇ、何か聞こえない?」
「な、なに言ってんだよ。聞こえねーよ」
暗い部屋に、テレビから聞こえる男女の声が響く。
耳を澄ませて食い入るように画面を見つめる私は、画面が暗くなる度に、そこに映る自分の姿に驚いていた。
「あぁ……あぁぁ」
「やっぱり聞こえるよ」
聞こえてる聞こえてるっ。
膝を力いっぱい抱いて、テレビに向かって小刻みに頷く。
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