500人が本棚に入れています
本棚に追加
「もしかしてお前、俺をビビらそうとしてる?」
「……ねぇ」
「なんだよ」
「何か聞こえない?」
「だから、聞こえな――」
「やっぱり聞こえるよ。……ねぇ、何か聞こえない? やっぱり聞こえるよ。ねぇ、何か聞こえない?」
「美月……? おい、どうし――」
「ねぇ、キコエテルンデショ?」
「う――うわぁぁぁぁぁあ」
画面いっぱいに白目を剥いた女の人の顔が映って、私の体中の筋肉が硬直する。
“復刻版で”
DVDを観る前に馬木くんが言っていた言葉を思い出した。
っこれ、私が子供の頃に観た映画――。
「馬木くん……」
何度も肩を浮かせて硬くなった首。
それを、錆び付いた蛇口を回すみたいに動かして横を向くと、馬木くんはなんともない顔で映画を鑑賞している。
「こ、怖くないんですか?」
私は今すぐにでも布団に包(クル)まりたいのに。
「怖くないよ。そういうシーンがきた時、テレビの角見てるから」
「えぇっ」
思わず大きな声を出してしまう。
「な、なに」
「私、ちゃんと見てるのに」
「堀内は家に帰っても人がいるからいいけど、俺、この後1人だよ?」
「う、馬木くんも怖いんじゃないですか。どうして借りてきたの?」
また、お決まりだろ、と同じ返事が返ってくることを想像しながら聞くと、暫く視線が交わったまま沈黙になる。
最初のコメントを投稿しよう!