幸せアロマ

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「もしかしてお前、俺をビビらそうとしてる?」 「……ねぇ」 「なんだよ」 「何か聞こえない?」 「だから、聞こえな――」 「やっぱり聞こえるよ。……ねぇ、何か聞こえない? やっぱり聞こえるよ。ねぇ、何か聞こえない?」 「美月……? おい、どうし――」 「ねぇ、キコエテルンデショ?」 「う――うわぁぁぁぁぁあ」 画面いっぱいに白目を剥いた女の人の顔が映って、私の体中の筋肉が硬直する。 “復刻版で” DVDを観る前に馬木くんが言っていた言葉を思い出した。 っこれ、私が子供の頃に観た映画――。 「馬木くん……」 何度も肩を浮かせて硬くなった首。 それを、錆び付いた蛇口を回すみたいに動かして横を向くと、馬木くんはなんともない顔で映画を鑑賞している。 「こ、怖くないんですか?」 私は今すぐにでも布団に包(クル)まりたいのに。 「怖くないよ。そういうシーンがきた時、テレビの角見てるから」 「えぇっ」 思わず大きな声を出してしまう。 「な、なに」 「私、ちゃんと見てるのに」 「堀内は家に帰っても人がいるからいいけど、俺、この後1人だよ?」 「う、馬木くんも怖いんじゃないですか。どうして借りてきたの?」 また、お決まりだろ、と同じ返事が返ってくることを想像しながら聞くと、暫く視線が交わったまま沈黙になる。
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