幸せアロマ

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「なんでだろ」 「み、観るの止めませんか?」 「あとちょっとじゃん」 「じゃ、じゃあ、テレビの角を見るタイミングを教えて下さい……」 口をすぼめて言えば、馬木くんは『いいよ』と頭を傾げて笑う。 「ほら、ここ。人が声を潜めてアングルが変わったでしょ。ここぐらいからテレビの角」 「い、今見ればいいですか?」 確かに、言われた通りテレビの角を見ていれば、怖い場面を直視しなくて済むけれど……。 ――バンッ 「ひゃあっ」 おどろおどろしく流れていたBGMの音量が突然大きくなると、心臓が口から出そうになった。 「音にまで驚いてんの?」 驚きますよ……、と苦笑する。 「ハハ。アンタ、かわ――」 何か言いかけた馬木くんは、目を伏せると口元を手で覆う。 「フフ、それだと視界にも映りませんね」 私も真似して自分の膝に視線を落とせば、テレビの音しか聞こえない。 「怖くない」 目を細めて顔を上げると、馬木くんの瞳が真っ直ぐ私を見ていた。 「なんですか……?」 背後が気になって確認してみるけれど、暗闇しかない。 後ろに誰かいるなんて言われでもしたら、今度こそ私は白目を剥いて倒れると思う。
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