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靴を脱いで、すぐにある冷蔵庫の前で中腰になる馬木くんは買った物を入れていく。
私はその間、玄関の扉を開けたまま靴も脱がずに、奥の部屋の扉を見つめた。
3回来たことがある。
3回で終わりだと思ってた。
“もうこの家には来ないでくれる?”
そう言われたから。
だから、またこの部屋の扉を見れるだなんて思ってなかったのに……。
「さっき買ったやつ、飲むよね?」
「あ、はい。お邪魔します」
慌てて靴を脱いで上がると、自分の家とは違う匂いがする。
なんだろう。いい匂い。
馬木くんの後ろを歩いてたらたまに香る匂いと同じ。
短い廊下を歩いた時、ふと目の端に洗面所が見えた。
ちらっと視線を流すと、床に、見慣れない柔軟剤のボトル。
柔軟剤の香りなのかな。
香りの正体を見つけて、ちょっと頬が綻ぶ。
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