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キッチンに並んで立つと、ちょっと動いただけで肘が当たりそう。
「はいおしまい」
「ありがとうございます」
木ベラでフライパンを撫でるようにお肉を炒めながらまな板に目を向けると、にんじんの皮も剥いてくれてた。
「……」
まな板の上を凝視したまま、手を止める。
さっきまでゴロゴロと自分を主張していたじゃが芋が、少し煮込めば溶けて無くなってしまいそうな程の大きさになっていた。
「フフ」
「何が可笑しいの」
「時短になりますね」
野菜も投入すると、フライパンの中でコロコロ転がるじゃが芋が可愛くて、自然と頬が上がる。
――ジュゥゥ
熱されたフライパンの上で油が跳ねる音だけが響く。
皮を剥く工程は終わったんだけどな……。
一歩後ろに下がった馬木くんは、ずっとそこに立っていた。
体半分に視線を感じると、そっちの腕が緊張してぎこちない動きになる。
後ろが気になるけれど聞けずにいたら、ふいに扉の開く音が聞こえた。
首を回して、部屋に戻る馬木くんの背中を確認すると、腕から余分な力が抜けていく。
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