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部屋に入らずに馬木くんが入っていった方を見ていると、タオルで手を拭きながら馬木くんが出てくる。
「どしたの」
「う、ううん」
馬木くんの後に続いて、私も部屋に入った。
「風呂洗ってた」
テーブルの前に正座して、今度はベランダに続くガラス戸を引く馬木くんの後頭部を見上げる。
「お風呂……」
「バイトがある日は、シャワーで済ませるから」
そう言いながら、洗濯物を取り込んでいく馬木くん。
私は、部屋の中をぐるりと見渡した。
そっか。馬木くんは、ここで生活してるんだもんね。
寝て、起きて、ご飯を食べて――。
その空間に自分がいることが、今の今になって凄いことなんだなと思う。
「もう食べる?」
「ん?」
「カレー、出来たんでしょ?」
「あ、はい。食べます」
チェストの引き出しに服をしまって部屋から出ていく馬木くんを見て、私もすくっと立ち上がる。
廊下に顔を出すと、しゃもじと平皿を片手に持った馬木くんが炊飯器の蓋を開けていた。
モクモク立ち上る白い湯気。
炊けたご飯の香りに、お腹が反応する。
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