【第28話】燻る火種

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  支度を終えて戻った会場では、長瀬と筧さんが受付に立ってくれていた。 慌てて駆け寄り、筧さんに声をかけた。 「すみません、代わります」 「大丈夫ですよ」 「いえ、私の仕事なので……」 「そうですか? 確かに、女性に立っていただいた方が華やかですしね。では、お願いします」 そう言った筧さんがまたふわりと笑い、私に場を譲ってくれた。 長瀬に並んで、来場者を捌いていく。 やるべきことだけを淡々とこなしていくだけで、お互い特に言葉はなかった。 開場の時間になり、ゲストがあのきらびやかな空間へと吸い込まれていく。 それを見守っていると、長瀬に腕を引かれた。 .
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