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ーーバタンーー
「叔父上! リリアをお返しください!!」
扉がまだ閉めきらない状態の中、グレイは発する。
「なんじゃ、グレイ。騒々しいのぉ」
男は飄々と答えた。男はグレイの叔父クロードである。
王の弟、そして、北門域の統治者、……故メイアの父なのだ。
「せっかく、娘と楽しくお茶をしておったのに」
クロードは、目の前の、顔を真っ赤にして座るリリアに優しい眼差しを向けた。
「あ、あの、グ、グレイ……様。
私、あの……」
リリアは、言葉をなんとか紡ごうとしたのだが、出てくる言葉はなんともぎこちない。
そんなリリアに、これまたグレイも優しい眼差しを向ける。そっと、リリアの手を取り、穏やかに言った。
「さあ、南門塔に帰ろう」
「まったく、慌ただしいのぉ。グレイよ、せっかく来たのだから、お茶でも一杯飲んでいったらどうじゃ?」
クロードは空いてる椅子を"トントン"と示す。
「……いえ! 帰ります」
グレイは、取ったリリアの手を軽く浮かせ、リリアを立たせた。
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