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グレイは、リリアの私室に向かっていた。
侍女控え室を過ぎようとすると、少し開いた扉から、リリアの声が聞こえてきた。
正確に言えば、リリアと侍女たちの声がである。
リリアは何故か、侍女たちに励まされていた。
「リリア様、頑張って!」
「必ず、グレイ様も喜んでくれます!」
侍女たちの励ましに、リリアは"うんうん"と頷いているようだ。
グレイは、扉の隙間から中を覗いてみた。
リリアは、左耳にそっと手を添えている。なんとも幸せそうな顔をしている。
ここ数日は、真っ赤な顔プラス、左耳に手を添えているリリアなのだ。
ーーさて、今日はちゃんと訊いてみようーー
グレイは、気づかれぬよう、静かに侍女控え室を通り過ぎ、リリアの私室の扉を、大きめの音をたて"トントン"と鳴らした。
「リリア居るかい? 入るよ」
これまた、少し大きめの声で告げ、扉に手をかける寸前、
「グレイ様!!」
侍女たちがバタバタと飛び出してきた。
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