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「皆集まったな。リリアきなさい」
「はい、お父様」
血色の好い薄白桃の肌に黒髪。優しい茶色の瞳をした少女は、軽やかな足取りで王の前にひざまずいた。
青の国第3姫リリアである。
「リリア、銀の国から王直書簡が届いた。銀の国王が、太子妃としてお前を迎えたいそうだ。太子グレイ殿は、青の国に隣している南門域領を統治している。わしとしては、安心してお前を送り出すことができる。……受けてくれるか?」
「はい! お父様」
リリアの頬は鮮やかな桃色に変わった。はにかんだ笑顔からは、嬉しさが溢れていた。
「リリア……」
王は複雑な心境であった。溺愛する末娘の婚儀の話、喜ばしい気持ちと寂しい気持ちが入り混じる。
がしかし、一国の王。リリアに視線を移し、
「銀の国に書簡を送る。銀の国の申し出を受ける」
そう宣言した。
「はい」
リリアもまっすぐに、父である国王に強いまなざしを送った。
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