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部室のドアをノックすると、
中からガタガタ、という音がした。
…何だろう…。
一瞬の間の後、
「はい」という返事。
「失礼します…」
ドアを開けると、
テーブルの向こうに
春山先生が座っていた。
「先生…」
ほっとして足を踏み入れると、
その二つ離れた席に座る
加賀月子の姿が目に入る。
…え…。
彼女は少し俯き、
指先で栗色のきれいな髪を
整えていた。
春山先生はいつもと
変わらない無表情で、
原稿に目を落としている。
「……」
…なに、この空気…。
「おつかれさまです、萌先輩」
立ち竦むわたしに、
月子ちゃんがにっこりと
微笑んで見せた。
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