第1話

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 カラン。と入口のベルが鳴った。  さて、今日も一日頑張りますか。 ***** 「こんにちは」 入ってきたのは「地球人常連客」の一人、大学生の田山君。現在シュウカツ中だそうだ。 「店長、聞いてよ。コイツ、また不採用通知が来たんだってさ」  後ろからもう一人。「宇宙人常連客」の一人、同じく大学生の有沢君。有沢君は世を忍ぶ仮の姿。もちろん「有沢君」も本名じゃない。  有沢君は私よりも地球人としては先輩だ。こちらに来て、すでに十年になるそうだ。私としては有沢君は「地球人」としての常識や、最近の流行を教えてくれるありがたい存在となっている。 「こんにちは。それは大変だねぇ」 「もう、オレ、就職できない気がしてきた」  こんな風にいつも情けない表情で、ここでのコーヒータイムを楽しむ田山君。 彼らが来ると、注文無しでコーヒーを淹れる準備を始める。  これが、「いつもの」ってやつだ。 「で、次はどこを受けるの?」 ちなみに有沢君はすでに大手企業に内定が決まっているらしい。 「小笠原出版」 「悪くないね。エントリーシートは?」 コーヒーを入れる間に田山君の次の挑戦先に取り組んでいるようだ。  うんうん。学生はこうでなくっちゃ。地球人三年生の私が言えたことではない が。 「店長、ね、店長ってば」 「ん、うん?呼んだかい?」 おっといけない、上の空になってしまっていたようだ。 「店長はさ、シュウカツ、どうだったの?やったでしょ?」 ん。いけない、そこまでの設定を考えていなかった。
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