第1話

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 カラン、とまたベルが鳴った。 *****  その人はとても不自然だった。  帽子を深く被り、真っ黒なサングラスに大きめのマスク。どう見てもその人は不審者だった。「彼女」はどうやら、宇宙人のようだ。 「いらっしゃいませ」  おひとり様のようなので、カウンター席を促す。  田山君、有沢君はいつもカウンター席の真ん中を占領している。  彼女は入り口付近を嫌がるように、カウンターの奥へ腰を下ろした。 「田山、あの子、ものすごく怪しいよな」 「あぁ。すごく怪しい」  二人もとても気になるようだ。 「レモンティー、ホットで」  一瞬、話しかけられたかどうかわからなかった。  洗い物に手を伸ばそうとしたとき、ぽそ、と聞こえた声を探した。 「声、小さ」    有沢君が田山君の頭を叩いた。  それを見て、彼らが発した声ではないことに気付く。 「ご注文ですか?」  慌てて、不審者にしか見えない彼女の傍へ。 「いかにも、芸能人ですって感じだな」  田山君がもう一度叩かれた。 「レモンティー、ホットで」  彼女はもう一度ぽそ、と発した。が、私には聞こえなかった。 「申し訳ありません、もう一度お願いします」 「レモンティー、ホットで」 「あ、あぁ。レモンティーのホットですね。かしこまりました」  どうやら正解だったようで、こくりと頷きが返ってきた。
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