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カラン、とまたベルが鳴った。
*****
その人はとても不自然だった。
帽子を深く被り、真っ黒なサングラスに大きめのマスク。どう見てもその人は不審者だった。「彼女」はどうやら、宇宙人のようだ。
「いらっしゃいませ」
おひとり様のようなので、カウンター席を促す。
田山君、有沢君はいつもカウンター席の真ん中を占領している。
彼女は入り口付近を嫌がるように、カウンターの奥へ腰を下ろした。
「田山、あの子、ものすごく怪しいよな」
「あぁ。すごく怪しい」
二人もとても気になるようだ。
「レモンティー、ホットで」
一瞬、話しかけられたかどうかわからなかった。
洗い物に手を伸ばそうとしたとき、ぽそ、と聞こえた声を探した。
「声、小さ」
有沢君が田山君の頭を叩いた。
それを見て、彼らが発した声ではないことに気付く。
「ご注文ですか?」
慌てて、不審者にしか見えない彼女の傍へ。
「いかにも、芸能人ですって感じだな」
田山君がもう一度叩かれた。
「レモンティー、ホットで」
彼女はもう一度ぽそ、と発した。が、私には聞こえなかった。
「申し訳ありません、もう一度お願いします」
「レモンティー、ホットで」
「あ、あぁ。レモンティーのホットですね。かしこまりました」
どうやら正解だったようで、こくりと頷きが返ってきた。
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