第1話

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 レモンティー。コーヒー以外にももちろん品揃えはある。コーヒー、紅茶、緑茶、チャイ、百パーセントジュースなど、できうる限り飲み物に関しては揃えるようにしている。  言わば、「飲み物専門店」というところか。  確かに、女性は紅茶の注文率が高い。オシャレな、新しい新茶などが入荷すると、女性の常連のお客様はそれを注文する。一度は試してみたいという感情が芽生えてくるのだろう。男性は基本的に決まったものを注文する。コーヒー党の方が随分と多く、各種揃えてはいるが、よく来てくださるお客様のためにいつも注文されるものに関しては、ストックを切らさないように気を付けているほどだ。 *****  彼女へ温かいレモンティーを提供する。 「お待たせいたしました」 「ありがとう」 「え」    彼女がぽそ、と又発した声をまた聞き逃してしまった。 「くっくっく」  田山君の笑い声がちょっと聞こえた。  しまった。お客様に恥をかかせてしまった、そう思ったとき。 「やってられるかー!!」  いったい何が起こったのか一瞬わからなかった。  レモンティーがカタカタ震えている。  そっと、目の前を見てみる。不審者である「彼女」が原因だと、そこで初めて気が付く。  目の前の彼女が叫びだしたのだ。  彼女は帽子とマスクをひったくるようにして剥ぎ取り、ばんっと、カウンターにそれを叩きつけた。 「ありがとう!そう言ったの!」  正直、衝撃的な出来事過ぎてリアクションができなかった。  心やカラダが小さな宇宙人であれば、飛びあがって逃げるほどだ。  ちなみに私はそんなに強い宇宙人ではない。
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