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海風はまたタバコをくわえる。
私はなんとなく顔合わせづらいから、海風とは逆方向の景色を眺める。
………。
……………。
む、無言…!!
おっも!沈黙重!
なんか、なんか話さないと!
立ち上がるタイミングを逃したっ!
「…ってか、お前何しに来たんだよ」
ふぅー、と風になびく海風の漆黒の髪と白い煙。
「タバコ、吸うついでにお前を起こそうと思った、んだけどな」
歯切れの悪い言葉。
てか、何で私の昼寝してる場所知ってんだよ。
「お前の寝顔見てたら起こす気が失せたんだよなぁー…」
あまりにも間抜け面だったからよ、と付け加え、不敵な笑みを浮かべる。
「んなっ!?誰が間抜け面だ!」
勢いよく立ち上がり、海風を睨む。
海風は表情をほとんど変えない。
「あ、お前今日放課後雑用な。おサボリの刑で。」
ズボンをはたきながら立ち上がり、私の頭に手を乗せてくる。
細くて、長くて、でもやっぱり男っぽいゴツゴツした感触。
「放課後、数学準備室な」
私の髪を指に絡めながら、少しずつ離れて行く。
少し乱れた髪を整えるように、今度はポンポンと軽く頭を叩く。
「俺の授業は出ろよ」
ふっ、と笑って屋上から出て行く。
ばくばくと不自然な動きをする心臓が痛い。振動が全身に響く。
「俺様がうつったらどーすんだよ、バカ海風…」
弱々しい私の呟きは、春風に消えた。
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