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空腹に耐えつつ、海風の数学の授業をうける。
触れられた髪が異様に気になるのは、たぶん、気のせいだ。
鼓動が速いのも、たぶん、気のせいだ。
不整脈だよ、うん。病院行かなきゃ。
そんな事を考えていると、いつの間にか授業は終了していた。
弁当の時間のせいか、一気にザワザワと騒がしくなる。
「蒼?今日どーしたの?」
不意に声をかけられる。
栗色の髪を横で束ねている人物が目に入る。
橘だ。
「な、にが?」
ぼーっとしてたせいで、微妙に頭が働いていない。
「いや、授業中ずっとぼーっとしてたよ?大丈夫?」
「何でもない。大丈夫だよ。」
弁当を机に広げて、卵焼きに箸を刺す。
「そう?悩みとかあったら言ってよ?」
「あぁ、リョーカイ」
冷凍食品の大学イモを頬張りつつ、当たり障りない返事をしておく。
「蒼、隣いい?」
ガタンと、イスを引きながら話しかけてくるのは、陸上部キャプテンの太一だ。
「……お前、あの子らはいいのか?ずっげーこっち睨んでるけど。」
廊下の方を見ると、数名の女子生徒が購買のパン片手にこっちを睨んでいた。
たぶん、太一のファンクラブの子だろう。昼を断られたのに私達と食べてるのが気に食わないのか。
「気にしないでくれ…」
モテる男はツライらしい。
哀れ太一。
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