1時間目:背負うモノ

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空腹に耐えつつ、海風の数学の授業をうける。 触れられた髪が異様に気になるのは、たぶん、気のせいだ。 鼓動が速いのも、たぶん、気のせいだ。 不整脈だよ、うん。病院行かなきゃ。 そんな事を考えていると、いつの間にか授業は終了していた。 弁当の時間のせいか、一気にザワザワと騒がしくなる。 「蒼?今日どーしたの?」 不意に声をかけられる。 栗色の髪を横で束ねている人物が目に入る。 橘だ。 「な、にが?」 ぼーっとしてたせいで、微妙に頭が働いていない。 「いや、授業中ずっとぼーっとしてたよ?大丈夫?」 「何でもない。大丈夫だよ。」 弁当を机に広げて、卵焼きに箸を刺す。 「そう?悩みとかあったら言ってよ?」 「あぁ、リョーカイ」 冷凍食品の大学イモを頬張りつつ、当たり障りない返事をしておく。 「蒼、隣いい?」 ガタンと、イスを引きながら話しかけてくるのは、陸上部キャプテンの太一だ。 「……お前、あの子らはいいのか?ずっげーこっち睨んでるけど。」 廊下の方を見ると、数名の女子生徒が購買のパン片手にこっちを睨んでいた。 たぶん、太一のファンクラブの子だろう。昼を断られたのに私達と食べてるのが気に食わないのか。 「気にしないでくれ…」 モテる男はツライらしい。 哀れ太一。
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