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太一より大きい、細く引き締まっている体。
耳につくくらいの黒髪を風になびかせ、凛とした雰囲気を醸し出している。
誰だ?
教師の顔なんてマトモに見た事ないから、誰なのかもわからない。
しばらく見ていると、男の吹いた煙が、キレイに円を描いた。
「何見惚れてんだ?金とるぜ?」
肩越しにこちらを向き、不敵な笑みを浮かべる。
整った顔立ちと、鋭い瞳。
「今の…」
「今の?」
体を半回転させ、私に向き合う。
「煙の…もう1回やってよ。キレーだったからさ。」
男はキョトンとしたあと、すぐにまた笑った。
「いいぜ。特別だ。」
タバコの煙を吸い込み、フワッと円を出す。
ぽんっぽんっと連続で出てくる煙は、キレイな円を描き、すぐに春の風にかき消される。
手をのばして、煙を追いかける。
ふわふわと消える煙が、面白く感じる。
「ぷっ……くくくっ。煙だけで喜べるのかお前。おもしれぇやつ。」
吹き出すように笑い、目尻に涙をうっすら浮かべている。
最後にフワッとまた煙を出し、タバコを携帯灰皿で揉み消す。
青い空と、白い煙と、ピンクの桜。
色合いはとてもキレイだ。
「うん…。キレイだからさ」
「安上がりだな。ほら、HR始まるぜ。教室戻れよ!」
あ、やっぱ教師なんだ。
はいはい、と返事をして、屋上の扉に手をかける。
「あ、そーいやお前、名前は?」
「望月蒼。」
肩越しに名前を名乗り、屋上を出た。
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