1時間目:背負うモノ

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パチン… パチン… パチン… ホチキスの音だけが響く。 他の生徒はもう帰っただろう。 まだ海風は帰ってこない。 どこ行きやがったアイツ…。 「今日、駅前のドーナツ屋が本日限定品発売する日なのにな…」 でももう売り切れた頃だろうなぁ。 虚しい気分のままホチキスを続ける。 「…よし、ラスト!」 パチンッと最後に音をたて、パイプ椅子に座る。 疲れた…。早く帰りたいけど、カギはアイツが持ってるんだし。 「オツカレさん」 ガラガラと扉を開き、憎たらしい声で私に声をかけてくる。 「もういいだろ?帰る!」 ドーナツのせいでイライラしているのか、少し荒く立ち上がる。 「そんなおこんなよ。もう少し付き合えって」 「何で私が…………それーーー!!!」 勢いよく海風が持つ紙袋を指さす。 駅前のドーナツ屋の紙袋だ。 「紅茶いれて来い。そしたらコレやるよ」 どこまで上から目線だよと思いながらも、とりあえず紅茶をいれる。 カップに紅茶を注いで海風の前に出す。 「……マズイ」 一口飲んで第一声がそれかよ!! 紅茶なんてマトモにいれた事なんてないし。 「まぁ、ホチキスに免じてドーナツくらいはやる。」 ポーンッと紙袋を私の方に投げてくる。 慌てて受け取り、袋から漏れる甘い香りに頬をゆるます。
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