ぽんぽこアワー

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行きはヨイヨイ、帰りはコワイ。

男は来い来い、女は帰れっ。

あぁ……あな恐ろしや。

これがぽんぽこ御殿におわす住人達の合言葉なわけで。男が一人でフラリとやって来ると、歓喜の嗄れ声が沸き起こり。女が来ると、能面づらで舌打ちをする。

ほんと、愛すべき住人達だ。

「アタシィ、絶対あの言葉だけは言わないからねぇ。……え？そうなの？やだぁ、もうっ。どんだけえぇっ」

言ってるし……どんだけ。

心の中でツッコミ入れながらウィスキーを呑んだりしてね。今日もぽんぽこ御殿は満員御礼というわけで。

ぽんぽこ御殿は、二丁目の飲み屋街の中にあってね。別名、三十三番街の悪夢とも云われている。俺はいつもそこへ呑みに来ているんだ。

ぽんぽこ御殿は、菜摘ママの財布がすっからかんになり次第開店だ。近所にあるパチンコ屋【WIN】。そこで菜摘ママは毎日LOSEして出勤だ。笑い話になるくらい勝った試しがないんだ。それもまた、ぽんぽこ御殿におけるお約束だ。

菜摘ママは、本当にママなのか？あんたがママでいいのか？ってくらいにハゲているおっさんだ。ハゲているからといってそれを隠すわけでもなく。ハゲをリカバリー出来る程に整った顔立ちかと言われると、別にそうでもなく。

見たことはないが、すっぴんは平安時代の貴族のような顔であるとかないとか。それにベルバラ調メイクを施しているらしい。

不自然な程に上につき上がっている太いつけ睫毛。左の目尻部分が糊付けが甘かったのか、はがれかかっているのがさっきから気になって仕方がない。

もしや、それも計算なのか……菜摘ママ。