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同時刻
「あっぶねー、宿題忘れるとこ......」
少年が忘れ物を取りに教室に戻った時、そこでは目を疑うような光景が広がっていた。蒼白く光る教室で人が一人その光に飲み込まれていた。
未だに何が起きているのかわからないが目の前で凄いことが起きていることはわかる。
やがて光が弱まり飲み込まれていた人ごと消えた。
さっきまで人が居たであろう場所にはうさぎのぬいぐるみのついた鞄と机に収まっていない椅子があるだけだ。
少年はその机の場所まで歩み寄った。
「一体何があったんだ?」
と呟くが、忘れ物を取りに来たという目的を思いだす。
少年はロッカーの中のプリントを数枚取り出すと自分の鞄の中に入れた。
「さて、帰るか」
「......ん...」
目的を終えたので帰ろうとしたとき、なにかの寝起きの様な声が教室の中から聴こえる。
少年は振り向くが誰もいない。
そして再び欠伸のような声も聞こえた。
少年は声の元に歩を進めるとそこには持ち主不明の鞄があるところだった。
少年は不思議そうに鞄を見下ろしていると鞄に付いているうさぎのぬいぐるみが自分の目を擦ったのを見た。
少年は何が起きているのかサッパリ解らない。
うさぎが自分の目を擦るのを止めて少年を見上げる。
「キャァァァァ!!巨人がいる!食べられるー」
うさぎが可愛らしい声で悲鳴を上げる。
「ちょっと待て!!誰が巨人だ」
「だって私より大きな人間がいたらそれはもう巨人しかないでしょ」
うさぎは鞄にもたれながら必死に弁明する。
「私より大きな人間?いやお前どう見てもうさぎだから」
「えっ!?今なんて...」
うさぎが何故かショックを受けている様だ。
「お前はどう見てもうさぎのぬいぐるみだから」
しばらくの沈黙。
そして。
「えっ?えぇぇぇぇぇぇぇ!!」
うさぎが絶叫をする。まるで自分の正体を初めて知ることになったような反応だ。
「ちょっと待って!私さっきまで人だったんだけど、なんで!?」
「さ、さぁ?」
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