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「……何なんですか、これ……」
わたしが顔を上げると、
白井さんはカップを置いて
椅子に座り直した。
「怖い事件だろ?
でも、人々の記憶には
ほとんど残らない。
世間ではもっと恐ろしくて
派手な事件が多発しているから、
この程度の記事はすぐに
埋もれてしまうんだ」
確かに、わたしも
この事件の事は記憶にない。
「この事件と月子ちゃんが何か……」
「うん。彼女はこの事件の関係者だよ。
対外的に言うと、
――加害者と被害者の、娘」
わたしはハッと息を呑んだ。
「この、亡くなった男性と
その妻って……。
月子ちゃんのご両親なんですか」
「そうだよ」
「でも、苗字が違ってる」
「うん、今は親戚の苗字を
名乗っているからね」
「…そうなんですか…」
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